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長澤 尚胤
日本接着学会誌, 41(10), p.420 - 426, 2005/10
植物由来であるポリ乳酸(PLA)は、機械的特性や透明性などが良いことから一番実用化に近い材料であるが、高い融点を有するが約60Cを超える温度域で熱変形し、強度が低下するという欠点がある。放射線橋かけ技術によるPLAの耐熱性改善について検討した。当初、PLAは、放射線照射により分子鎖が切断される放射線分解型の材料であるため、橋かけを助ける助剤を用いた放射線橋かけ法の研究を進めた。1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA),トリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA),トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が有効であり、3%TAICを用いて最も橋かけしたPLAが約60Cでも熱変形せず、融点以上でも形状を保持した。耐熱性が改善されたPLAは高温に耐える熱収縮材や透明性を保持した射出成形品に応用開発された。良好な生体適合性を有するPLAを放射線橋かけして再生医療材料に応用するため、照射時の温度を変えることによって、橋かけに必要なTAIC濃度を1%に低減化でき、1/5に低線量化できた。この開発した技術によって、プラスチック廃棄物処理問題を解決し、資源循環型社会を構築するために、生分解性プラスチックの利用が増えることが期待できる。